脳腫瘍 その1
脳腫瘍は大きく以下の二つに分かれます。
1 良性腫瘍
2 悪性腫瘍
今回は良性腫瘍について書きます。
良性腫瘍とは
転移の危険性が少なく、短期間で増殖、浸潤することがないため、一般的に腫瘍を全摘すれば予後は良好。
組織学的には髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘種、頭蓋咽頭腫、血管芽腫などが挙げられる。
脳実質外に発生する腫瘍は良性であることが多い。
⑴髄膜腫 Meningioma
・くも膜から発生する腫瘍。
・脳腫瘍の3割近くを占める。50代〜60代がピーク。
・女性に多い。
・WHO grade Ⅰ〜Ⅲ
・90%以上はテント上に発生する。円蓋部>傍矢状洞≒大脳鎌など
基本的に脳内のどこでも発生しうる。
・症状は、発生する場所によって異なるが
頭蓋内圧亢進
緩徐に進行する巣症状
てんかん発作
・局所的には、
大脳円蓋部⇨片麻痺、けいれん
大脳鎌、傍矢状洞⇨下肢のけいれん、運動麻痺
蝶形骨縁⇨内側1/3だと視力障害、眼球運動障害、三叉神経障害など
嗅溝部⇨嗅覚低下、精神症状、視力障害など
小脳橋角部⇨顔面神経麻痺、聴力障害、三叉神経障害など
・頭部単純X線で
骨増殖、骨破壊、血管溝拡大、石灰化 が見られる。
鞍結節部、蝶形骨縁部ではblistering(水泡状骨変化)
・頭部CTでは、境界明瞭、腫瘍周囲の浮腫、石灰化など
・頭部MRIでは、dural tail signが60%で見られる。
これは、腫瘍付着部近傍硬膜が線状に造影される所見である。
また腫瘍が柔らかい⇨T1W1でlow、T2W1でhigh
硬くなるとT2でもlowになることがある。
・血管造影では、基本的に外頸動脈硬膜枝によって栄養される。
sun-burst appearance(腫瘍内放散像)が見られる。
・病理所見の基本は以下の3つ
①渦巻き whorl 全体的に細胞が渦巻状に並ぶ
②合胞体形成 syncytium 細胞同士が癒合、1つの細胞体に多数の核
③砂粒体 psammoma body 石灰化が同心円状に広がって形成
・治療の原則は、外科手術による全摘出。
全摘出が困難な場合は、安全な範囲で部分摘出し放射線治療と併用するのが望ましい。有効な抗がん剤はなし。
・術中の出血を減らすために、術前に栄養血管塞栓術を行うこともある。
⑵神経鞘腫 schwannoma
・末梢神経を覆うシュワン細胞から発生する腫瘍。聴神経(特に前庭神経)に好発することが多い。
・50代に最も多い。
・小脳橋角部に発生する腫瘍の約80%を占める。
・高音優位の聴力障害、耳鳴り(蝸牛神経症状)、めまい・ふらつき(前庭神経症状)
・時に交通性水頭症を来すこともある。
・頭部X線では、内耳道の拡大、内耳道の漏斗状変形などが見られる。
・頭部CTでも内耳道の拡大
・MRIでは嚢胞病変が検出されることが多い。石灰化はない。
・前庭機能検査として、温度眼振検査(カロリックテスト)が挙げられる。
シュワノーマでは反応性の低下、廃絶が認められる。
・聴性脳幹反応
・病理所見は、基本的に以下の2つ
①柵状配列 palisading
②ベロケイ小体 verocay body
・Antoni A型⇨柵状配列、ベロケイ小体がある。細胞密度が高い。間質が充実。
Antoni B型⇨細胞密度が低い、間質が空胞化。
・治療は手術と定位放射線治療(ガンマナイフ)